2012年1月20日金曜日

素直なこころで・・・  知 愚銛

                          (写真をクリックすると大きくなります。)

 遠くから見ると、まるで悪戯坊主の虎刈り頭だ。
 山の中腹から上の緑の樹林帯に、多数の白い帯のような筋が水平や斜めに走っている。これが「縞枯れ現象」だという。
日本では、ここ北八ヶの他に、東北地方の八甲田山や紀伊半島の吉野山などに見られるそうだ。八甲田山や紀伊半島の吉野山に行ったことはあるが、注意していなかったためか、あるいは知識がなかったためだろう、縞枯れに気付いた記憶は無い。

  この縞枯れ現象は北アメリカでも見られるそうで、ニューハンプシャー州やニュージャージー州など、モミ属の優占する森林でみられ、"波状更新"とか"モミの波"と言われているとする記事がある。

 好奇心を満たすべく、ウェブ百科事典のウィキペディア解説の冒頭部を引いてみよう。

『 縞枯れ現象は、亜高山帯の針葉樹であるシラビソ、オオシラビソの優占林に限って見られる現象。木々が立ち枯れたり、倒れたりすることにより、遠くから見ると縞状の模様が見られる。
山の自浄作用とも木々の世代交代や天然更新とも考えられている。大規模な縞枯れは蓼科山や縞枯山などで見られる。Wave-regenerationと呼ばれる。』

 今回の縦走では、2300〜2600m前後を数回アップダウンしたが、標高を上下する毎に白骨化した立ち枯れの樹木が多くなったり少なくなったりした。即ち標高が変るに連れて、白骨化した樹木が斑に出没する現象に出くわした。
 山で白骨化した樹木を見ることは稀でない。しかし、このように遠目にも縞模様がはっきりと見える樹林帯を見ることはなかった。不思議で面白く、僕の好奇心が疼き始める。

 なぜこのような現象が起こるのだろう。面白いので少し調べてみた。

1.風の影響を主な要因とする説
 一定の方向から吹く恒常風に直接さらされた樹木は蒸散が過剰になり、葉が飛び夏の時期に光合成が十分にできず、やがて立ち枯れる。それ以外の樹木は風に直接さらされないので、ほぼ一定の速さで樹高を増す。その結果、全体として縞状パターンを保ったままで、ゆっくりと風下に動くという説。

2.土壌条件を主な要因とする説
 林床が岩塊斜面となっているために土壌に乏しく、樹木が深くまで根をはることができない。これが縞枯れのスタートとなる。

3.その他の条件(雨氷の存在)を要因とする説
 雨氷が発生し枝葉に付着すると、その重さにより樹木は折れたり、倒れたりする。その結果、林冠にギャップができ縞枯れ現象がスタートする。

 こららの複合という場合も考えられるが、いずれにしても確たる決定打はないようだ。

 さらにこの現象の面白いのは、縞枯れゾーンが山腹の下から上(風下方向)へと移動することである。この理由は幼樹環境の変化によるもので、日光と土壌環境のなせるところ。私のような素人にも一応肯けるような気がする。

 里山のクヌギやコナラなどは、利用を目的として数年、あるいは数十年ごとに伐採し、人工的に世帯交代を繰り返している。
 一方、自然の縞枯れも世帯交代の一つのパターンと考えられている。山火事や人工的な山焼きと同じで、森林の生命力を保つための自浄作用だという。
 縞枯れも山火事も、土壌を日光にさらして虫干しし、その生命力を回復させているのだろうという。

 樹木の墓場と言われる縞枯れだが、植物のダイナミズムが感じられ、知れば知るほど植物は凄い生き物だと思えてくる。

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