子供に水泳を教えるとき大切なのは、その楽しさと楽しみ方を知らせることです。もともと子供達は水に対して大変な好奇心を持ち、水たまりがあれば足で触ってみたり、手で触ったり、砂を運んでみたりするものですが、だからといってすぐに泳げたり、潜ったりできるものではありません。

　幼児期に水が恐い、水泳が嫌い、という感情を持ってしまうと大人になってもそれを克服するのは難しくなってきます。このことを常に念頭に置いて子供達と接することが大切です。歩く、走る、とぶなどの運動は自然に習得されますが、水の中であそび、浮き、潜る、といった行為は日常での自然練習の機会がありません。

　また、他の運動で無理な運動をすると、怪我となってあらわれやすいですが、水泳では溺れることを除いては危険は目立ちません。そのため子供の不安や恐怖などの心理面 への配慮を忘れ、無理な運動を強要しがちです。その結果 、水泳嫌いの子供を作って行くということです。

　私達の日常の中で水の中に入る行為はお風呂以外にはありません。お風呂では体が固定され、適当な深さで顔を出して入ることができ、ここでの恐怖感を大人が持つことはないでしょうが、小さな子供にとっては波や水圧、深さ、広さ、流れ、などが非常に不安定で恐怖感を持っているのがふつうです。プールではその恐怖が大きくなることは間違いないのです。

　しかしながら、このような不安定さが子供達の好奇心をくすぐり、水の中での活動の楽しさを体験して行くのも事実です。このような楽しさは、テレビを見たりマンガを読むような受け身の楽しさではなく、自分自身が主体的に行動する楽しさであるということ、そしてこのような遊びの中から、自分自身の可能性や力に気付いたり、友達とのコミュニケーションの取り方を知り、水そのものの性質を知的に感じることができるようになります。そして、もちろん親と子の心と体のふれあいの場所になるということです。

　最近では、「水泳は体にいいんだよ。」などといいながら、子供にだけ水泳をさせて親御さんが水泳をしないことが多いようですが、子供達は「体にいいなら、なんでお父さんも、お母さんも水泳しないんだろう。」と思っているはずです。心と体のふれあいのためにも、月1回でも子供と一緒に水泳をしてみてはいかがでしょうか。