1.日時
平成21年4月3日(金曜日)16時~18時
2.場所
文部科学省3F2特別会議室
3.議題
- 関係者からのヒアリング(臨床研修医の立場から 1.立花蘭(札幌医科大学) 2.吉村俊太郎(順天堂大学))
- これまでの主な意見の整理(案)
- その他
4.出席者
委員
荒川委員、飯沼委員、石川委員、小川委員、北村委員、水田委員、田中委員、辻本委員、寺尾委員、平出委員、平野委員、福田委員、吉田委員、吉村委員
5.議事録
○荒川座長 それでは、時間でございますので、これから医学教育カリキュラム検討会第6回を開きます。
今日は2名の臨床研修医の先生においでいただいておりますので、ヒアリングをして、そして議論を行いたいと思っております。
最初に事務局から、今日の委員の出欠状況の報告と配付資料の確認をお願いいたします。
○樋口医学教育課長補佐 本日は、どうもありがとうございました。まず、委員の出席状況でございますけれども、出席状況につきましては、お手元にございます資料のとおりでございます。南先生がおくれて来られるか、やむを得ない場合はご欠席というようなご連絡が来てございます。
なお、本日の配付資料につきまして確認させていただきます。お手元に、まず議事次第に続きまして、資料1といたしまして、前回の検討会の概要、それから、資料2といたしまして、医学教育カリキュラム検討会「これまでの主な意見の整理」と、さらに別冊としまして、その主な意見の詳細版、それから、参考資料としまして、吉田委員ご提出の資料がございます。
以上でございます。何か過不足等ございましたらお申しつけください。
○荒川座長 よろしいでしょうか。それでは、きょうは、今のお話のように、きょうのお話は大きく2つございます。1つは、初期臨床研修を受けている先生方をお二人お呼びいたしました。札幌医科大学臨床研修医の立花先生と、それから、順天堂大学の臨床研修医の吉村先生のお二人でございます。お二人とも平成13年以降の新しい医学教育システムの中で卒業されまして、そして医学・医療を志すきっかけ、あるいは現在、あるいは将来の指針の中で、医学教育が与えた効果、あるいは卒業者の立場から見た医学教育の改善点、こんなことについて意見を賜りたいと思っております。その後で、この検討会におきます取りまとめにつきまして、これからの意見を整理していきたいと思っております。
それでは、まずお二人の先生から、それぞれ10分ぐらいをめどにプレゼンテーションをお願いします。そして議論したいと思います。
最初に立花先生、よろしくお願いします。
○立花発表者 札幌医科大学研修医の立花です。よろしくお願いいたします。
いただいた資料で、1番から6番までテーマが振ってあったので、それに沿ってお話ししていきたいと思っております。
まず、自身が医師を志す理由、きっかけ、時期ということなんですけれども、私は、小学校5年生のときに、野口英世の伝記を読んで感動して、それで医師を志すことにしました。その後も、人体だとか生命に非常に興味を持ち、それで医師になりたいなとずっと思って今まできました。
次に、みずからの将来の専門、地域医療への従事が決まっている場合は、その時期やきっかけということですが、私は、将来、精神科など主に心を扱う分野に進みたいというふうに考えております。このきっかけについてなんですが、それは高校1年生のときに、みずから落ち込んだり、人生についてちょっと悩むことがありまして、それで自分と同じような立場で悩んだり、困っている方を救いたいなというふうに思ったのがきっかけです。
また、自分の周りに性同一性障害の方や、うつの友人がいまして、ほかに自殺で亡くなった友人もおります。それで、精神科的な疾患だとか、障害を抱える方に対して非常に強い共感を持っております。それで、自分でちょっと向いているかなというふうに思っていて、それで精神科を考えております。
次に、卒業生の立場から見た医学教育の改善点ということなんですが、特に臨床研修との比較における卒前臨床実習の改善点ということなので、それについて、まずお話ししたいと思います。
○水田委員 問題点は皆さんはご存じなんですか。
○荒川座長 資料を用意してあります? なかったですか。
○立花発表者 資料といいますと、こちらのほうではなくてですか。
○荒川座長 何か先生自身がまとめたものは。
○立花発表者 済みません。何も配付資料などは用意しておりません。
○北村委員 6つのことを書いてあるという紙すら私たちはもらってないので、何を言っているかもわからないんですが。
○立花発表者 あっ、そうなんですか。
○荒川座長 わかりました。樋口さん、何かありますか。
○樋口医学教育課長補佐 済みません。お願いするに当たりまして、ご参考として項目をお示しいたしました。大きく3つほどに項目が分かれてございまして、1つは、ご自身が医学教育に入った段階で、その志を持ったきっかけや時期についてが1つの点でございます。それからもう1つは、今、進路が決まっておられるような場合、あるいは今後の進路を考えるに当たって、それを決めた時期、あるいはそのきっかけとなるものはどうかということでございます。それから、そうしたご自身の経験というものが1つの流れとしてございまして、もう一つの流れといたしましては、今ご自身が経験された医学教育を振り返って、その教育内容についての改善点、あるいはご自身が受けた教育の中でどのような点が心に残ったか、効果的であ� �たかと、そういった点を参考として、きょうお越しいただく先生方のほうにはお示ししてございます。
○荒川座長 その点、事前に皆さんには言ってなかったので、ちょっと戸惑った。私も今初めて聞いたんですけど、じゃ、資料は用意しないということで、今の3番目の点は、先生が経験されて、今から振り返ってみて、卒前教育に対してどういう感じを持ったかということですので、じゃ、ひとつはっきりと、ゆっくりと話してください。お願いします。
○立花発表者 はい。ゆっくりとしゃべります。
○田中委員 何年に卒業されて、どこで研修したかとか、そういうこともちょっと教えていただけますか。
○立花発表者 はい。卒業は昨年の3月、私は札幌医科大学出身で、現在、札幌医科大学で研修しております。
○水田委員 20年の3月ですね。
○立花発表者 はい、そうです。
○荒川座長 じゃ、また後ほど先生に質問をさせていただきますので、今のこと、はっきりとおっしゃってください。お願いします。
○立花発表者 はい。それでは、まず臨床研修との比較における卒前臨床実習の改善点ということでお話ししたいと思います。
まず、卒前臨床実習の問題点というのは、医師と比較して責任感を感じないということが問題点だと思っております。科にもよるんですが、もう少し学生時代にも、患者さんと責任を持ってじっくり向き合っていける形にしたほうがいいんじゃないかなと思っております。例えば教科書的な知識を詰め込むだけであれば、そういった実習ではなくて講義でもできるし、1人でも教科書を読んだりして勉強することができると思います。そのため、既に行っている科もあると思うんですが、毎日、まず患者さんと接してカルテを書かせるようにしたほうがいいと思います。また、私の大学は、学生は電子カルテに書き込むことができなくて、どうしてもモチベーションが下がるというか、実践的でないというふうに私は思っております。な ので、例えば実際に医学生も医師同様、カルテに書き込みできるようにするとか、実際の臨床に近い形で経験させたほうがいいのではないかなと思っております。
また、例えばレポート提出の課題として臨床実習で出されることがあるんですが、ただ電子カルテを見て、それを書き写して、はい、レポートというふうに提出するだけではなくて、実際に毎日患者さんとお会いしていく中で、学生自身が考えて、それでレポートとして書けるようなものを課題として出すようにしていくべきではないかなと考えております。
次に、いただいていた項目では、共用試験や医師国家試験が医学部の教育の中に与えている影響ということであったので、それについてもちょっとお話ししたいと思います。
これらの試験は2段階に分けて勉強するよい機会になっているんじゃないかなと思っております。知識を身につけないまま臨床実習に出るのは、非常に患者様に対して失礼なことであると思いますし、また、ちゃんとベースとなる知識がないまま臨床実習を始めても、結局よくわからないということで終わってしまうのではないかなと思います。また、国家試験も同様で、結局自分の興味のある科だけではなくて、興味のあまりない科も、広くいろいろな科の勉強をするいい機会になっているのではないかなと思います。
また、大きく試験が学校の教育に与えている影響といえば、試験の形式が大きいんじゃないかなと思います。以前は、私の大学では記述式の試験が多かったんですが、CBTが始まってから、大半の科でその形式に準拠したようなマルチプル・チョイスの形になっております。また、自分自身は、学生時代、試験が記述式ではなくて、マルチプル・チョイスですごく楽でよかったなというふうに思っているんですが、それだけで果たして教育としていいのかなと思う部分があります。結局、知識の詰め込みになってしまうことが多くて、自分自身、学生が考えていくというような講義が少なかったんじゃないかなと思っております。
次に、私自身が受けた医学教育の感想だとか、あと印象深かった講義や実習ということでポイントとしていただいているので、それについてもお話ししたいんですが、私自身は、講義される先生の考え方だとか、その哲学だとかを聞くので好きだったので、そういった講義が非常に印象深く残っています。多分、試験に直結するような知識だけ、予備校的な講義をされる先生もいらっしゃるんですが、それはそれで知識になると思いますし、それがすべて悪いというわけではないんですが、ただ、試験には役立つと思うんですが、後々、印象深く残っているかと聞かれると、あんまり印象に残ってないかなというふうに思っております。
どういうふうに変えていったらいいかというと、講義によっては、最後にその講義の感想などを書かせるような授業もありました。それは非常に、後々自分の中でも、どういったことをそのとき感じたかなというのは、やっぱり文章にして書くと残りますし、また、その知識も自分の中で定着するんじゃないかなと思います。
また、私の大学の法医学の講義では、幾つか最後に問題を出して、それをメールで回答させるといったことがありました。それで、それに対して先生が必ずフィードバックでメールを返してくれるといった講義がありまして、そういった形で何らかの形のフィードバックがあると非常に学生もやる気も出るし、知識としても定着するし、また、課題も出ているしで、ちゃんと考えるようになるんじゃないかなと思います。だから、講義で大事だと思うことは、一方的に講義をされる先生が、ただしゃべるんじゃなくて、学生もコミュニケーションできるというか、やっぱり双方向なやりとりがあると、教育として非常に有益なんじゃないかなと思っております。臨床実習の場も一緒で、ただ臨床実習で講義をされて、時間が来たから、� ��い、おしまいというんじゃなくて、やっぱり何らかのお互いにやりとりが、その教えてくださる先生ともそうですし、患者さんともちゃんとしたやりとりがあると、学生自身、非常に勉強になるんじゃないかなと思います。
以上で、一応用意しておいたことをしゃべりました。
○荒川座長 はい。ただいま、昨年卒業されて、1年間研修をされた中で、学生時代を思い返して卒前教育のお話がありました。手元に資料がないのであれですが、先生方お聞きになって、立花先生にいろいろなことをお聞きしてみたいと思いますが、いかがでしょうか。
私から手始めに、先生は札幌医科大学を卒業されて、母校で研修しようと思った何かありますか。
○立花発表者 まず、私は精神科に興味を持っておりまして、それと関連して、神経内科とか、そういったこともちょっと勉強したいなと思いました。それで、大学だと内科という単位で神経内科を選択することができるので、それで大学にしました。
○荒川座長 わかりました。じゃ、北村先生、お願いします。
○北村委員 東京大学の北村と申します。よろしくお願いします。
先生の大学は、北海道の道民の税金でできている大学です。ご存じのように多くの大学で地域枠という定員増がありました。そういうことも踏まえて、先生が受けた教育の中で、さすが道立の学校の特徴が出ている、あるいは地域医療で、地域に尽くすというような心の教育を受けたとか、そういうようなご経験はありますか。
○立花発表者 そうですね。私の大学では特に地域医療総合医学講座という講座がありまして、そちらの講座が特に熱心に地域医療について教育しております。それで、ほかの大学とあまり比較はできないので、わからないんですが、結構、地域の現状だとか、実際にそういう講義があったりとかで、おそらく地域医療を志したいという人は多いんじゃないかなと思っております。
私自身は、あんまり学生時代は地域医療には興味はなかったんですが、ただ、昨年、私が大学で研修する中で、4か月になるんですが、その地域医療総合医学講座のほうで研修をさせていただきました。実際に大学で総合診療科としてプライマリーケアみたいなことをしているんですが、私が見ていた中で、専門家の先生というのは、やはりどうしてもご自分の科の疾患しか見ないというか、ほかの専門の先生がいるので、そちらに任せてしまうことが多いように感じていて、なかなか全人的にその患者さんを見るというか、どうしても臓器別に、そこの患者さんの疾患の部分だけ大学病院では見ている部分が多いのかなというふうな印象を抱いています。学生時代に、地域医療総合医学講座の先生がそんなお話をされていたんですね。 それを自分の昨年の研修を通して、実際に身をもって経験したなというふうに思いました。
○荒川座長 どうぞ、平出先生。
○平出委員 京都大学の平出と申します。非常にしっかりしておられるなと思って感心しました。先ほどご指摘があった、患者の方と向き合う実習、あるいは患者の方とやりとりがある実習の重要性を、2回強調されて、すばらしいことだと思います。私は、教育センターで教育のコーディネーションをしている者なんですが、現場の実習というのは、実態を知る機会はあるようでいて、なかなかないんですね。現場の先生方に、この間ワークショップで聞きましたら、大学によっては学生が電子カルテを写していて、患者さんのベッドサイドに行ってないという報告がありました。中には実習期間中一遍も行かなかった学生がいたと。それにもかかわらずプレゼンテーションをやると堂々とやるという話もあったんです。それは、先生 が1年研修してみて、やっぱりあまりよくないというふうに思いますか。
○立花発表者 研修というか、学生時代の私の経験をお話しさせていただきますと、やはりそういった科はあるんですよ。それで、出る課題の形式にもよると思うんですが、科の方針によっては、例えばレポートをまとめる上で、実際に患者様にお話を聞きたいと言うと、えっという顔をされる科もあったりするんですね。それで、別に患者様と接するというのは、必ずしも患者様に対して何か侵襲的なことをさせていただくというんじゃなくて、お話をまず伺って、実際に接してみて、それで何か共感的に感じるということでもいいと思うんですよ。ただ、学生時代に私の周りにいた人だとか、あと実際に同期の研修医などを見ていて、なるべく患者様と接したくないと言っているような人がいるのも事実なんですね。
○平出委員 問題ですね。
○立花発表者 医学部に入る時点の話をしても仕方がないのかもしれないですが、どうしても人と接するのが好きではないけれども、偏差値が高くて、それで医学部に入ろうと思う方がたくさんいると思うんですね。そういった方をどういうふうに人とうまく接していけるようにするかというのをまず持っていかなければいけないというか、人を好きになるじゃないですけれども、もしかしたらそういった教育も必要なのかなと思っております。
○平出委員 ありがとうございます。
○荒川座長 平野先生、いかがですか。
○平野委員 大阪大学の平野ですけれども、立花先生、しっかりした考え方を持っておられると思います。その中で、知識のみを与える講義は、確かに試験には役に立つけれど、結局後で心に残るのは、どう言われたかはよく覚えていませんが、要するに考えるとか、心に響くような、そういう講義がよく残っていると。私も同感だと思います。
最近、いろいろな知識が要求されて、医学部のカリキュラムをつくるときに非常にヘビーになってきて、コア・カリキュラムがだんだん充実する。コア・カリキュラムというのは、基本的には知識を与えるようなカリキュラムですね。基本的にはやっぱり医学部の教育というのは、そういう知識の切り売りであってはいけないと思います。知識は教科書に書いてあるし、辞書に書いてある。だから、必要に応じてそれを読めばいいと思います。講義では、教科書を読んで理解できるために必要な最低限の知識を教えるだけで十分だと思います。ようするに細かいことよりも全体像が理解で来るように講義をするのが重要です。知識の切り売りよりも、重要なのは、物事をどう考えるか、そういう研究者マインドも含めて、臨床医学に対� ��ても、やはりいかに判断力、考える力を与えることが出来る教育こそが僕は大事だと思います。知識を与えるコア・カリキュラムと、考え方を教える講義というのは相反するところがありますが、両方必要な事も確かです。要はバランスが非常に大事だと思うのですが、そのあたりはどう思われますか。
例えば極端な話、僕は教科書だけ与えておいて、あとは考える講義のみにしても大学の講義としてはいいと思います。そういう極端な考えの対局に、受験校みたいに、コア・カリキュラムのみ行うという考えもあります。今の若い人はどう思いますか。
○立花発表者 講義を聞いていた身としては、私の大学では1つの授業につき60分間の講義なんですが、ずっとそういう知識の詰め込みみたいなことをされると、どうしても退屈して集中できなくなってしまうんです、60分間ずっと。それってすごく効率が悪いことだなというふうに思っております。
だからといって、その先生の考えることだとか、哲学をずっとお話しされて、それを聞くのは私はすごく楽しいんですけれども、それだとどうしても教育ではなくなってしまうということもあると思うので、知識として聞きたいことって教科書に載っていることだけじゃなくて、実際の臨床の場で、例えばこういったことに気をつけなくてはいけないとか、そういう例えばポイントだったりとか、できれば教科書に載ってないような、実際の臨床の場で重要なことだとかを聞けるといいのかなと思います。
結局試験があるわけですから、教科書に載っている知識は講義で聞いたとしても、それだけで試験に対応できるわけではないので、それを考えると、その教科書に載っていることをお話しされるのもいいんですけれども、それだけじゃなくて、ほかの、教科書に載ってないようなことも、半分ぐらいとか、そんな感じでやっていくといいのかなというふうに思うんですけれども。
○田中委員 東京医科歯科大学の田中ですが、講義というのは出席をとるんですか。
○立花発表者 はい。とります。
○田中委員 みんなとるんですか。
○立花発表者 はい。全部の講義でとります。
○田中委員 ああ、そうなんですか。試験対策というのはあります? 何か試験対策委員会みたいなのが学生の中であって。
○立花発表者 あります。科目ごとに分かれていて。
○田中委員 それは、伝統みたいな感じですか。医科歯科にもありますけど。